不動産ブログ

なぜ、不動産業界は電話営業が多いのか?

「〇〇不動産のカトウと申しますが、マンション経営にご興味ありませんか?」

会社や個人の携帯電話に、このような投資用不動産の営業電話がかかってきた経験がある方は多いのではないでしょうか。

正直迷惑です。「どこで番号を知ったんだ」「忙しいのに」と、不快感を抱くのも当然のことです。

そして、こう思いがちです。 「そんなに電話でグイグイ売り込まないと売れないような、良くない商品なんじゃないか?」

しかし、彼らが電話営業という古い手法を続けるのには、商品が悪いからではなく、明確な「戦略的理由」が存在します。

この記事では、なぜ不動産投資業界で電話営業がこれほどまでに多いのか、その裏側にあるロジックと、その戦略が迎えている転換点について解説します。

狙いは「何も知らない人」— 電話営業が最適な理由

結論から言えば、電話営業の最大のメリットは「これまで不動産投資を全く聞いたことも、考えたこともない人」にアプローチできる点にあります。

彼らのターゲットはすでに不動産投資に興味を持ち、ネットで検索している人ではありません。ターゲットは、投資自体を自分事として捉えていない「潜在層」あるいは「無関心層」なのです。

興味がある人は、かえって面倒

逆説的ですが、今まさに「不動産投資 始め方」「ワンルーム 節税」などと主体的に調べている人は、営業マンにとって扱いにくい顧客になることがあります。

なぜなら、彼らはネットや書籍で情報を集め、自分なりの「理論」を構築してしまっているからです。

「いや、新築は利回りが低いから中古一択でしょう」

「そのシミュレーション、金利上昇リスクが甘くないですか?」

「私はインデックス投資がメインなので、不動産は今はいいです」

このように、彼らはすでに比較対象や独自の判断基準を持っているため、営業マンの提案を素直に受け入れにくい傾向があります。

「真っ白な状態」だからこそ、提案が響く

一方で、電話営業でアプローチする「無関心層」は、不動産投資に関する知識がゼロです。「節税?」「年金対策?」「生命保険代わり?」— すべてが初めて聞く話です。

もちろん、99%は「興味ないです」と電話を切るでしょう。しかし、残りの1%が「え、そんなメリットがあるんですか?」と耳を傾けてくれる可能性があります。

だからこそ、営業マンは「まずは話だけでも聞いてみませんか?」と、自社のロジックや商品のメリットをゼロから丁寧に説明し、顧客として育てていくことができるのです。

これは、顧客が来るのを待つ「プル型」ではなく、こちらから仕掛ける「プッシュ型」の典型的な戦略です。

「売れない商品=電話営業」という誤解

ここで冒頭の疑問に戻ります。「売れないような商品だから、電話で強引に売り込むのではないか?」という疑問です。

これは半分正解で、半分誤解です。

もちろん、中には価値の低い物件を強引に売ろうとする悪質な業者も存在するでしょう。

しかし、「電話営業=悪」と短絡的に結びつけるのは早計です。彼らの目的は、前述の通り「無関心層の開拓」です。どんなに優れた金融商品であっても、その存在を知らなければ誰も買いません。不動産投資という商品は高額で複雑なため、そもそも「知ってもらう」ためのハードルが非常に高いのです。

電話営業は、そのハードルを強引に超え、新しい見込み客リストを作るための、最も古典的で、ある意味では効率的な手段だったのです。

電話営業がもたらす致命的なデメリットと、業界の未来

しかしながら、この戦略には誰もが知る致命的な欠点があります。 それは、「とにかく迷惑がられる」ことです。

よく、電話番号を教えた覚えはない、違法に入手して電話をかけてきている!と憤りを感じる方がいらっしゃいます。

それは間違いで、例えばインターネットのサービスに登録するときなどに利用規約などはさっと流して同意することが多いと思いますが、

そこに「第三者(名簿会社)などに提供する場合がある」と記載があったりします。

違法かそうでないかに関係なく現代において、その「迷惑」という感情は瞬く間にインターネット上に「悪評」として記録されます。

「〇〇不動産、営業電話がしつこすぎる」

「断っているのに何度もかけてくる」

「この会社は迷惑電話業者リスト入り」

Googleマップの口コミ、SNS、匿名の掲示板。一度書かれた悪評は消すことができず、会社の信頼性に永続的なダメージを与えます。

かつては「うるさい」と言われても、その声は広まりませんでした。しかし今は違います。たった一件の強引な電話が将来の優良な顧客を遠ざけてしまう時代になったのです。

変わりゆく営業スタイル

この事実に、多くのまともな不動産会社が気づき始めています。

「短期的なアポイント獲得のために会社の評判を犠牲にするのは、もはや割に合わない」と。

結果として、業界のトレンドは変わりつつあります。 強引な電話営業に頼るのではなく、有益なブログ記事を書き、分かりやすいYouTube動画を配信し、無料のオンラインセミナーを開催する。

つまり、価値ある情報を先に提供し、「この会社から話を聞いてみたい」と顧客側から思ってもらう「インバウンド・マーケティング」へと、明らかにシフトしています。

もし今もなお、旧態依然とした強引な電話営業だけに頼っている会社があるとすれば、それは時代の変化に対応できていないか、あるいは本当に「悪評を気にしない会社(=売り逃げ前提の会社)」である可能性が高いと言えるかもしれません。